
この記事では、火災や自然災害によって損害を受けた建物は、修理後でも火災保険が請求できるのか、実際の請求方法や注意事項を詳しく解説していきます。
火災保険のほとんどは、火事だけでなく台風や風災、雹(ひょう)災、雪災でも請求できます。建物に関する損害はもちろん、家財にも適用されますので、浸水や落雷によって壊れてしまった電化製品や家具なども補償の対象となります。また、第三者による損傷や窃盗、工事業者のミスによる出火にも対応しています。
火災や自然災害による被害がでてしまうと、修理に追われて火災保険の申請を忘れてしまったということも珍しくありません。せっかく火災保険に加入していたのに、請求できる内容を把握しておらず後になって気づいたという声も耳にします。損害から時間が経っていたり、修理してしまった後でも火災保険を請求できるのでしょうか。
- 修理後でも保険金は受け取れるか
- 保険金請求手続きの流れ
- 保険金請求時の注意点
保険金は修理後も請求可能
火災保険は修理後でも請求することができます。
保険法により申請期限が原則3年以内となっていますので、過去の損害でも遡って請求が可能です。
ただし、保険法の規定とは別に各保険会社によって請求期限を設けているケースもありますので、加入している保険会社の約款を確認しましょう。
保険法第九十五条(消滅時効)
保険給付を請求する権利、保険料の返還を請求する権利及び第六十三条又は第九十二条に規定する保険料積立金の払戻しを請求する権利は、三年間行わないときは、時効によって消滅する。
すでに修繕された後でも、火災や自然災害で損害したことが証明できれば保険金を請求できます。
修繕前後に撮った写真や修理業者の見積もりが残っているかを確認し、保険会社へ相談しましょう。
一度請求したが、後になって申請内容に漏れがあったという場合でも正当な理由であれば追加請求することも可能です。
保険金請求手続きの流れ
火災保険が期限内であれば請求できることがわかっても、保険金を受け取るにはどういった手続きが必要なのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
一般的な火災保険を請求する手順をご紹介します。
1 保険会社へ連絡
速やかに契約する保険会社へ損害を受けたことを連絡します。
契約者名、保険証券番号、損害内容や日時など、具体的な被害状況を担当者へ説明します。
2
保険会社へ必要書類を送付してもらう
保険金の請求に必要な書類が送られてきますので、内容をきちんと確認しましょう。
3
保険会社
主に必要な提出書類として以下のものが挙げられます。
- 保険金請求書
- 事故内容報告書
- 建物登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 修繕見積書、領収書
- 被害状況の写真
災害内容によって種類が異なりますので、保険会社の指示に従い必要な書類を揃えて郵送等で提出します。
4
保険会社による調査
書類がすべて提出されると、保険会社にて審査が行われます。損害の大きさによっては、損害保険登録鑑定人と呼ばれる専門家が直接訪問し、現場で調査が実施される場合もあります。
5
保険金の入金
保険金の金額が確定すると、申請から約1か月程度で契約者の指定した振込口座へ支払われます。
保険金請求時の注意事項
保険金請求時の際は以下の事項に注意してください。
保険金額に満たないと保険金がおりない
契約時に設定した免責金額を超えないと、保険金が支払われないといったケースがあります。
免責金額とは、一定の金額までの損害は契約者が払うという自己負担のことです。少額の損害でも対応すると保険会社に負担がかかるため、契約者が支払いできる金額まで自己負担することで、保険料を安くするという仕組みになっています。
免責金額にはフランチャイズ方式と免責(エクセス)方式の2種類があります。
フランチャイズ方式とは、一定の金額を超えれば保険料が全額支払われるという契約です。
一昔前では免責20万円が標準化されており、20万円を超えれば全額補償されますが、20万円を超えないと保険料は1円も支払われないという仕組みです。
20~30年の長期契約をされている方はフランチャイズ方式になっている可能性がありますので、一度確認してみましょう。
一方、免責方式とは、設定した金額を超えた分の差額が支払われるという契約です。
免責金額の設定は0円~20万円と保険会社によって異なります。例えば、免責5万円の場合、損害額が4万円であれば保険料は支払われませんが、損害額が10万円であれば差額の5万円が給付される仕組みとなっています。
保険会社にもよりますが、免責金額は災害ごとに設定できる場合があります。
住んでいる場所が台風被害の多い地域であれば風災のみ免責を0円とするなどしてリスクに備えて調整するのもおすすめです。
自然災害以外による被害や経年劣化は含まれない
火災保険が請求できるのは、台風による屋根の破損で雨漏りが発生した場合など、自然災害により発生したものが適用されます。
しかし、築年数が経過していてもともと修繕が必要だったと判断されれば、保険金がおりないことがあります。
日頃から外壁のヒビ割れや剥がれ、腐食など建物の状態をチェックし、経年劣化のサインが見られたら速やかに修理など適切に対応しましょう。
しかし、実際に経年劣化による被害なのかは素人で判断することは難しいです。古い家だからと諦めず、一度保険会社へ相談してみましょう。
契約者の所有物のみが補償対象
火災保険は契約者の所有物のみが対象です。
例えば、自宅にあるカーポートが台風により破損したことで近隣住民宅の所有物にも被害を出してしまった場合、適用されるのはカーポートの修理費用のみです。
自然災害で発生した事故に関して損害賠償責任は発生しないため、個人賠償責任補償特約でも対象外となります。被害にあった近隣住民はご自身で契約している火災保険で請求する必要があります。
契約内容以外の自然災害は請求できない
火災保険を請求する前に、ご自身の契約内容を再度確認しましょう。
自然災害はいつ何が起こってもおかしくありませんが、契約時には「これは必要ないかな?」と思い、補償内容から除外していることも考えられます。
地震や噴火、これにより発生した津波での災害は火災保険の補償に該当しません。これらの災害に対応するためには別に地震保険へ加入する必要があります。
また、風災により窓ガラスが破損したことで雨風が吹き込み、室内の電化製品や床が破損した場合は自然災害と判断され火災保険で請求できますが、不注意で窓を開けっぱなしにしていた際に発生した損害などは対象外となります。
修繕前の被害状況を説明できる証拠が必要
損害が発生して修理した後でも3年以内なら保険金が請求できますが、被害状況が確認できる証拠が必ず必要になります。
修繕前後の写真、修理業者の見積書や領収書、火事など大きな被害が発生している場合は罹災証明書などが該当します。
火災保険では家財も補償内容に含まれますので、破損した際に散らばった破片などを片付ける前に写真を複数枚、様々な角度から撮っておくとよいでしょう。
ただし、被害によっては危険な状況も考えられますので、簡単に撮ったものでも問題ありません。
まとめ
火災保険は修理後でも損害発生後3年以内であれば請求することができます。修繕前後の状況が分かる立証を揃えて保険会社へ提出することで、自己負担した分の修理費用が補償される可能性があります。
毎年きちんと保険料を払い続けている火災保険を、正当な理由で請求するのは当然の権利です。
「もう時間が経ってるし」と思わず、まずは保険会社へ相談してみましょう。
ただし、年数が経過するほど災害との因果関係を結び付けることが難しくなっていきますので、後回しにせず気づいた時点で忘れずに連絡してください。
また、これを機に契約内容を再確認することで、今後起こりうる損害対策にもつながりますので、一度見直してみてはいかがでしょうか。