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マンションやアパートに住んでいる方は、マンションの管理組合が加入している火災保険の補償内容をしっかり理解しているでしょうか。さらに言うと、それを理解した上で賃借人本人が契約する火災保険に加入するどうかを決められているでしょうか。
「管理組合が加入しているから、自分は火災保険に加入しなくていい」。そのように思っている方も多いと思いますが、決してそのような安易な判断はしてはいけません。
そこで今回はマンションに住んでいる方が火災保険を正しく理解できるよう、マンション管理組合が加入している火災保険や、賃借人が契約する火災保険について解説していきます。
マンション管理組合の火災保険とは?
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マンションのような賃貸物件や複数人が居住する建物では、その建物の所有する個人または管理組合が加入している火災保険があります。
実は居住者に貸している一部屋で火災が起き建物が焼失しても、失火者に重大な過失が認められなかった場合には、損害賠償請求ができないと失火責任法でも定められています。そのような事態も踏まえて、マンション管理組合は火災保険に加入しているのです。
民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス
(口語訳:民法第709条の規定は、失火の場合には、適用しない。ただし、失火者に重大な過失があったときは、この限りでない。)
とりわけマンション管理組合が加入している火災保険の補償範囲は共用部分と呼ばれるところですが、これを理解するためには、まずは共用部分と専有部分を知る必要があります。
共用部分とは?
エントランスやエレベーターなど。
契約者はマンション管理組合。
共用部分とは、マンションに入居している人が共同で使用する部分を指し、エントランスやエレベーターなどが該当します。共用部分では、管理組合が火災保険に加入します。
したがってマンションの共用部分に関する事故や損害は、管理組合が加入している火災保険が補償します。
専有部分とは?
契約者は区分所有者。
専有部分とは、居住空間のことを指し、床や壁などが該当します。専有部分では、所有者の各個人が火災保険に加入します。
したがって自分の部屋で被害が生じた場合には、マンション管理組合が加入している火災保険では補償できず、賃借人本人が契約した火災保険で補償することになります。
賃借人も火災保険に入るべき?
これらを踏まえると、賃借人も火災保険に入るべきでしょう。
専有部分と共用部分に区別されているのは、所有・使用・管理・費用に対する責任を所在を明らかにするためであり、原則専有部分は賃借人本人が責任を負い、共有部分は管理組合が責任を負います。
つまりマンション管理組合の火災保険では共用部分のみが補償の対象になり、専有部分を補償するには個別に火災保険に加入していなければならない、というわけです。
火災保険に加入せず万一火災などの大きな事故を起こしてしまった場合、建物自体はマンション管理組合が加入している火災保険によって補償されるとしても、自分の家財や修復費用、隣家への補償などは自己負担になってしまいます。
そのため、「マンション管理組合で保険に入っているから」という理由で、専有部分まで補償されると思い込み、個別に火災保険に加入する必要がないと思っているのは飛んだ勘違いなのです。マンション管理組合の火災保険は、あくまでも共用部分の保険に過ぎないということを覚えておきましょう。
マンション管理組合の火災保険はどうやって使う?
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マンションの共用部分は管理組合、専有部分は各個人が火災保険に加入する形になるんですね。
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マンション管理組合が加入している火災保険の補償対象は、「あくまで共用部分」とわかったものの、具体的にどれがどの程度なのか、気になるところです。ここからは具体的な補償対象や保険金請求の方法を解説していきます。
火災保険の補償の対象は?
これまでに、マンション管理組合が加入している火災保険の補償対象がエントランスやエレベーターなどの共用部分であることは説明しました。
具体的にはロビーのソファーや駐車場も含まれ、専有部分以外の箇所すべてが該当します。
・エレベーター
・ロビーのソファー
・駐車場
・駐輪場
・街灯設備
・塀
・フェンス
・庭木
・花壇
・水道引込管
・屋上
・バルコニー
これらのほかにも、お隣や上下の階との間も共用部分となることがあります。
実際に、マンション管理組合が加入している火災保険によって、補償された事例には以下のようなものがあります。
- 専有部分のストーブによる火事が火元となり、共用部分であるベランダに燃え広がった。
- 強風によりマンションの駐輪場の屋根が飛ばされてしまった。
- 給排水設備からの水漏れでロビーのソファーが使用不能になった。
- 落雷により過剰な電流が流れ、エントランスのインターホンが壊れてしまった。
詳しい事情はマンション毎にも異なる可能性があるため、管理組合が加入している保険の補償内容をしっかり確認することをお勧めします。
火災保険の補償内容は?
以上に挙げたマンション共用部分で起こった事故は、基本的に管理組合が加入した火災保険から補償されます。
補償内容についても個人で契約する火災保険とほとんど変わりません。以下の通りです。
・風災、ひょう災、雪災
・水災
・建物外部からの物体の衝突など
・給排水設備の事故による水濡れ
・騒擾、集団行動、労働争議に伴う暴力行為、破壊行為など
・盗難
・破損、汚損
このように個々人で加入する火災保険の補償内容とほとんど変わりません。
異なるところがあるとすれば、賠償責任補償特約や水漏れ原因調査費用補償特約などいくつかの特約が、マンション管理組合用に設けられています。
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施設賠償責任補償特約
施設賠償責任補償特約とはマンション共用部分の施設に起因する偶然の事故によって、他人の身体に障害を与えたり、他人の財物を損壊して損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われる特約のこと。
マンションの共用部分である壁のタイルが剥がれ、駐車場に停まっていた来訪者の自動車に落下し破損した。
水漏れ原因調査費用補償特約
水漏れ原因調査費用補償特約とはマンションにおいて、漏水・放水等による水漏れ事故が発生した場合に、その原因調査に係る費用を補償する特約のこと。
管理組合で保険金請求する方法は?
保険金の請求方法についても、管理組合で加入している火災保険と各個人で加入している火災保険の間に違いはほとんどありません。
加入している保険代理店の連絡すれば、必要な書類を教えてもらえますが、原則として以下の書類が必要になります。
・損害の写真
・修理見積書
・罹災証明書など(火災被害の場合)
マンション共用部分に何らかの被害がある場合は、ただちに加入先の保険代理店に連絡すれば問題ありませんが、場合によって保険金請求に管理組合の承認が必要になることがあります。
例えば、ロビーのソファーを汚損してしまった場合は、汚損についての補償は受け取ることができますが、修理方法について管理組合に承認を取らなけらばなりません。
つまり、ソファーを修理するにしてもカバーの部分だけを交換するのか、ソファー自体を交換するのかなどを決め、承認を得てから対応することになります。
保険金請求そのものは、書類が作成できれば1~2週間程度で保険金が振り込まれますが、管理組合の承認が必要となると、数カ月かかってしまう可能性もあるので注意してください。
賃貸住宅向け火災保険とは?
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これまでマンション管理組合の火災保険について解説してきましたが、賃貸向けの火災保険に加入しようか悩んでいる方も多いと思います。
冒頭で「マンションの専有部分は賃貸者本人が契約した火災保険の補償範囲内」と説明しましたが、もう少し詳しく賃貸住宅向け火災保険について解説していこうと思います。
早速ですが、マンションのような賃貸住宅向けの火災保険は主に家財保険、借家人賠償責任保険、個人賠償責任保険の3つの種類に分類することができます。順に解説していきます。
家財保険とは?
家財保険とは、自身の所有する家電や家具などの損害を補償するものです。つまり、入居者の家財一式に対する補償がこの家財保険です。基本的にこれが賃貸住宅向けの火災保険の基本となります。
補償内容も通常の火災保険と変わりなく、火災のほか、落雷、爆発、水害、水漏れなどの自然災害も含まれます。さらに被害にあった際に、利用不可になった家財を片付ける費用も実費で支払われます。
この家財保険は、いわば「自分の財産のために入る」保険でしょう。
借家人賠償責任保険とは?
家財保険を「自分のために入る」保険と言うならば、借家人賠償責任保険は「大家さんのために入る」保険ということできます。
賃借人には賃貸借契約によって、「退去時に原状回復する義務」が課せられていることが多く、それができない場合に損害賠償責任を負うことになります。
その際に登場するのが、借家人賠償責任保険です。火災や爆発、漏水などによって借りている部屋に損害を与えてしまった際に、原状回復に必要な費用を補償してくれます。しかし、補償は対象は自分が借りている部屋のみであり、隣の部屋の補償は範囲外なので注意して下さい。
個人賠償責任保険とは?
個人賠償責任保険は、隣家に損害を与えてしまう場合に適用できる保険です。つまり、相手を怪我させてしまった際の治療費や慰謝料、破損物の修理費や物を壊してしまったときに負う損害賠償などが対象になります。
具体的には、水漏れで階下に損害を与えた場合や、飼い犬が他人に跳びついて怪我をさせてしまった場合に、個人賠償責任保険を利用することができます。
ただ、この個人賠償責任保険は自動車保険や損害保険でも加入することが多いため、既に加入している場合もあります。当然既に加入していれば、新しく加入する必要はないため、重複には気を付けましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
マンションに住んでいる方に向けて火災保険の解説をしました。
場合によってはマンション管理組合が加入している火災保険のほかに、個別に火災保険に加入する必要がある人もいると思います。
万一の事故に備えて、あらかじめマンション管理組合が加入している火災保険を確認しておくと良いでしょう。